脳の「痛みをしずめる力」を強めるセルフトレーニング(鎮痛脳リハビリ1)
『マインドフルネス編』
人間の体には、体から脳に痛みの情報を伝える伝導路(痛みのアクセル)と、脳から体へ痛みのブレーキをかけるシステムがあります。(下行性疼痛抑制系)
線維筋痛症・CRPS・帯状疱疹後神経痛など難治性の痛みで長く苦しんでいる方は、この痛みのブレーキシステムが上手く働かず、痛みの伝導路からの情報に脳が必要以上に注意を向けた状態が固定・増強していると言われています。(脳の誤作動)
遠絡療法による脳のライフフローを改善する治療は、脳の血流や髄液、神経伝達物質、ホルモンなどの流れを改善し、セロトニンなどの分泌を促進することで、このブレーキシステムを再び発動しやすい状態にします。
同時に自分でブレーキを踏む作業を繰り返すことで、この力を強めることが大切です。
そのために役立つ方法を、少しづつご紹介していきたいと思います。
【マインドフルネス編】
「ブレーキを踏む=痛み以外の感覚に注意を向ける」です。
そのために、有効とされるものの一つに
「 マインドフルネスによるトレーニング」があります。
マインドフルネスとは「今ここにある心の在り方」のことを言います。
簡単に実践できそうなものをご紹介しますので、
ぜひ一日の中で何度も取り組んでみてください。
徐々に脳の注意が外向きになり、痛みのブレーキをかける働きを回復することができます。
・・・・・五感に注意を向けるトレーニング・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【レーズン・エクササイズ】 (味わいレッスン)
①視覚:表面の形・色・光沢・凹凸・転がした時の動きなどの視覚的特徴をよく観察する
②嗅覚:匂いの性質や強さなどの視覚的特徴を感じる。鼻に近づけたり離したりしながら同じように。
③聴覚:指でこすったりした時に出る音に注意して聴覚的特徴を感じる。
④触覚:指ではさんで凹凸を感じたり、押して柔らかさ・肩さを確認したり、触覚的特徴を手で感じる。その後ゆっくりと口に含む。噛まずに舌の上で転がして、口の中でも触覚を感じる。
⑤味覚:ゆっくりと噛み、味を感じる。噛みながらそれぞれの変化を観察する。(嗅覚・聴覚も変化する)
⑥内受容感覚(内臓の感覚):ゆっくりと飲み込む。のどの奥から食道、胃への移動していく、内臓の感覚を感じる。
言葉にするのではなく、ただ、感じる、味わう、ということに集中して下さい!
【呼吸を数えるエスササイズ】
①靜かに座ります(リラックスできれば椅子でもソファーでも座禅でもOK!)
②目を閉じます。
③呼吸に注意を向けるために、まず1回大きく深呼吸をしましょう。
④姿勢と気持ちが落ち着いたら、目を閉じたまま二分間、
自分の呼吸の回数を数えることに集中してみましょう
(息を吸って吐いてで1回です)
まずはこれだけ、初めは2分間行ってみましょう。
呼吸を数える以外の、他の考えやイメージが浮かんできてもかまいません。途中どんなに脱線しても、集中を呼吸と呼吸を数えることに戻すことができればOKです。これだけでも、瞑想の呼吸にはいっていくことができます。
はじめは上手くできなくても、回数を重ねて時間をのばしていくようにします。
【歩く歩数を声に出して数える】
① 通院、買い物、散歩などの際、何歩で到着したか歩数を数えます。
この時、口の中ででも良いので、声を出して数えます。
途中で数えることを忘れてしまったら、またそこから数えます。
② 歩くことが難しい場合は、座ったまま両手を軽く肩の高さまで上げてから
振り下ろします。「1回振り下ろしてまた肩の高さまで戻る」を1回として
100回まで数を数えます。
これも、小声で良いので声を出して数えるようにしましょう。
両腕の力はなるべく余計な力を入れずにリラックスして行って下さい。
慣れてきたら、だんだん回数を増やしていきましょう。
《マインドフルネス的セルフトレーニングのコツ》
①注意を痛みや頭の中に向けないこと!
・・・・・頭の中に注意が向いている状態≒考え事や悩み事をしている状態
②頭の外の世界に注意を向けよう!
頭の外の世界とは、五感⇒体の外の世界と、
内臓感覚⇒体の中だけど頭の外の世界です。
繰り返して行うたびに、少しづつブレーキの力がついてきます。
気長に行ってみましょう!
次回以降は、脳のブレーキ効果を上げながら体全体の痛みを改善する
「鎮痛・関節トレーニング」のやり方をご紹介していきます。
参考及び一部抜粋文献『ココロとカラダの痛みのための邪道な心理療法養成講座』粳間剛著(三輪書店)