患者さんとの会話で、大切なことを気が付かされましたように感じました。
急性脊髄炎後遺症で両下肢の痛み痺れがずっと継続しているAさん(60代女性)との会話です。
Aさん
「遠絡療法の治療は棒で押されて痛いですけど、自分の普段の痛みと違うところが刺激されて切り替わって楽になるみたいな感じがします」
治療師
「もうしかすると脳にいつもと違う信号が伝わってAさんの普段の痛みの回路が弱まったり抑えられるのかもしれませんね」
Aさん
「じゃあ、痛いところと違うところをペンペン叩けばいいのかしら?」
治療師
「よくお子さんが転んで痛い~って泣いたりして、お母さんがよしよしって優しくさすると泣き止んだりしますよね。ゲートコントロール理論というお話があって、脳にはいってくる感覚の門があって、触覚をいれてあげると痛覚が入るのを邪魔して痛みが抑えられるというのがあるんです。優しくなでてあげるといいんじゃないのですか?」
Aさん
「本当だ。小さな子が泣いていたら、ぎゅっと抱きしめて よしよし痛いの痛いのとんでいけ!ってやると泣き止みますね。」
「孫が娘に ばーちゃんの痛いところをなでなでしてあげて と言われて、ちっちゃなモミジのような手で私の足をなでてくれると、すーっと痛くなくなります。」
治療師
「素敵ですね!もしかして、ご自身でも足にダメ出ししないで小さな子供にするように 痛いのに良くがんばっているね。よしよしってぎゅっと抱きしめる気持ちで優しくなでてあげると良いかもしれませんね」
Aさん
「そうですね。ついこんな足じゃだめだ。こんな自分じゃだめだって、自分で自分にムチ打っているかもしれません。もっとなでなでしないと。」
そんな会話のなかで、ものすごくハッとしました。慢性疼痛は、急性期の痛みの原因が治癒しても、それがきっかけで脳の誤作動がおこり必要がなくなっても痛みの信号が鳴り続けている状態と言われます。
痛覚神経が必要以上に過敏になり、心身に受ける刺激、ストレスをすべて「危険だ!」「不具合がある!」と受け取り必死に脳に報せ続けて、押さえられなくなっている状態とイメージできます。
そして慢性痛に苦しんでいる患者様は「こんな状態ではだめだ。」「この痛みさえなければ」「こんな(痛い)足なんていらない」「何もできなくて家族に申し訳ない」と、ご自身の体や心にムチを打ち続けている方がとても多いです。
痛覚神経が小さな子供であったとしたら「何がそんなに不安なの?心配なの?」「危険じゃないよ」「不具合はないよ」「もう大丈夫」「知らせてくれてありがとうね」と抱きしめてなぜてあげる。そんなことも大切なことかもしれない。
そんなふうに感じました。
外からは遠絡療法やお薬で、中からはご自身で優しく抱きしめてあげると、セロトニンやオキシトシンなど痛みを抑えるホルモンもたくさん出てくると思います。
一緒に痛覚神経を安心させてあげましょう!