小泉医院遠絡医療センター ブログ

医療法人財団 東西医会 草加整形外科内科&小泉医院 遠絡統合医療センターからの情報発信です☆

CRPSをのりこえて 

「今朝、ダメ元で受験した目標の大学への合格がわかったんです。」

「ネットで確認して、自分のメールとパスワードだから、たぶん本当なんだけど、まだ信じられない気持ちでいっぱいなんですけど。」

昨日、久しぶりに愛知県から治療に来られた20歳のお嬢さんに、そんな嬉しい報告をいただき、しみじみそのお嬢さんのカルテを見直してみました。                    

                       

2018年8月 16歳で突然右肘関節内側の痛み。翌日には肘〜前腕〜手指まで膨張。

整形外科のMRIなどの検査では異常がみつからず。9月には右上肢全体がむくみ、赤黒く変色。肘〜腕のしぼられるような締め付け感。肘を伸ばした状態で硬直し、全く曲げらず、CRPSの診断。さらに11月からは、吐き気、頭痛。側頭部は触れただけでも痛み、

洗髪も困難。CRPSが頭部にも拡大した状況となり、学校も休学へ。                        

                                                                                         

整形外科、神経内科、ペインクリニック、大学病院で、様々な薬の処方など試しながら、同年11月より、地元の遠絡療法を専門とする治療院にて治療を開始。

翌年2019年3月。その治療院の先生から小泉正弘医師に紹介があり当院を受診。

小泉医師の診断、遠絡処方のもと、遠絡統合療法による治療を実施。初日の治療では、変化が明確ではありませんでしたが、2回目の治療後には、その場で肘の曲げ伸ばしが行いやすくなり、3回目の治療直後には10段階の痛み評価で頭痛の9の痛みが4へ、右腕から手の7の痛みが3へ軽減することを確認しました。

              

それから、その地元の遠絡認定治療師の先生と、当院と、また大学病院の痛み外来の先生方と共に、息の長い取り組みとなりました。

 

3ヶ月後の6月には、当初はあった手の不随意運動がなくなり、右手で鉛筆をもったり、洗濯たたみに取り組む、右手ではしを使い口元まで食事を運ぶなどができるようになり、1日2〜3時間の登校も再開。それでも続く右上肢の痛みや頭痛と付き合いながら、治療も続けながら、合計4年かけて高校を卒業。

「最初の学年の友達と一緒に学年をあがっていきたかったし、年下の中に一人で入っていくのは,正直きつかった。」

「それでも、あとから同じ学年の友達と留年した学年での友達と、友達が2倍になって良かったと思った。」

試験の時期、体育の授業、修学旅行、部活など、キツさと共にではありつつも高校生活を精一杯楽しみ、無事に卒業。さらに1年浪人して、2023年3月17日、20歳の春の快挙でした。

昨年の秋は、「もう、右手は負担をかけなければほとんど痛みはないけれど、頭が痛くて勉強に集中がしにくい。あと受験まで少しと思うとストレスで予備校に行けなくなり、家に引き返してしまうこともある。」そんなふうに、下を向いていたこともあった彼女でした。

心身ともに相当にきつい試練の時期を、何度も何度も乗り越えて、本当に良くがんばりました。

 

「大阪に一人暮らしになります。キャンパスライフを楽しむつもりです。」

 

まだ、不用意に腕や頭を押されたりすると強い痛みが出てしまう痛覚神経の敏感さを抱えつつの彼女ですが、これからも「それでも人生を信頼する」強い力が彼女を守っていくと思います。

 

CRPS(複合性局所疼痛症候群)は、打撲や捻挫、怪我などがきっかけで脳が誤作動を起こし痛みの悪循環を引き起こす難治性の疼痛症候群です。重度の場合は、治療も難しく時間がかかります。遠絡統合療法(遠絡療法)は、薬や神経ブロック注射、リハビリ、カウンセリング等の標準治療とともに、その「脳の誤作動」を鎮静化させ,、改善方向を後押しする東洋医学的な治療法です。多くの改善例を経験させていただいています。

 

もし、CRPSと診断されて不安になられている状況があっても、どうぞ焦らずに。

必ず自分で良くしていくという覚悟をもって、一緒にがんばっていきましょう。

 

           

                             文責 堂下